色々な何かが通り過ぎていった跡を感じる「スラムオンライン」

本作を読み、過去の自分を思い出して、まず頭に思い浮かんだ一言「地球か……、何もかもが懐かしい……」。


僕も一頃、Enemy Territory というオンライン FPS にどっぷりとハマリ込み、実生活を破綻させつつ鉛玉の雨の中を走ったもんだ。
本作の主人公もそういう類の人。
しかし僕と主人公・坂上悦郎との間には決定的な違いがあった。
彼は戦うことの意味を見出した。
僕は未だ何も見つけられていない。
この作品を読む過程で得られたのは過去の記憶。
遠くも近くもない頃の、僕の頭が正常と異常の間にあった頃の記憶。
楽しかったことや悲しかったこと、嬉しかったこと、悔しかったこと、その他にも沢山ある忘れていた記憶。
そういった切り捨てた物を思い出して微鬱になりつつまたゲームをやってる。
進歩してねーなー。


オンラインゲームに熱を出したことがある諸兄ならば、確実に沢山の不発弾を掘り起こすこと請け合い。
そしてまたゲームの世界へ旅立ちたくなることだろう。
坂上悦郎の友人ように北の果てへ旅立つことの無いように、と祈る気持ちでいっぱいだ。


追記。
ハヤカワから出てるけど全然ハード SF じゃないです。
最近僕はハードな奴はツラくて読めないので、ぬるーいのばっかり読んでます。

スラムオンライン (ハヤカワ文庫 JA (800))
桜坂 洋
早川書房
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