矢作俊彦「ららら科學の子」

まだレビューしていなかったので少し書いてみる。
この本は正直言って20代の若者向けではない。
活字離れが懸念されている40〜50代向けだ。
30年前の話題(全共闘とか文革とか)なんて分からないよ。
結果としてそれがダメだったという知識は僕たちにはあるけれど、それがどういうプロセスを経て駄目だったのかは知らないし、今からその歴史について勉強したとしても「〜という理由で推測される」程度の理解しか得られないだろう(もちろん勉強したほうが良いに決まっているけれど)。
考えてみて欲しいんだが、自分が生まれる前の歴史を勉強してそれを「実感」出来たことはあるだろうか。
その時代に同じ空気を吸った人間にしか分からないことという物もあるだろう。
ちょっと横道にそれたけれど、この本が40〜50代の人間向けだという理由が何となく分かるだろう。
だが、それゆとり世代の人間でも楽しむ方法はある。
SFを読む人間がいつもやっているアレだ。
ちょっと引用しようと思ったけど、誰の本が元ネタだったのか忘れてしまったのでアレなんだが、
量子力学を学ぶときはニュートン力学とは全く違う物だと認識しなければならない」
とかなんとかって書いてある参考書がある。
ファインマン物理だったかな。
まぁつまりは違う世界のことだと思って読めば良いのだ。


と少々大げさに書いてみたけれど、実際はそこまで読みにくいものではないかも。
作者の矢作俊彦は恐らくハードボイルドかその手のミステリ出身の人間らしく、本書もそういう手法、文体で書かれている。
読みなれた人なら違和感なく読めるだろう。
否定的な文章を書いたけど、僕的にはそこそこお薦めです。